夢物語4
あと2日で入学式だ。
スーツの用意はしてあるし、
今のところ準備万端だ。
「明後日から忙しくなるね。
入学式終わったら次の日は健康診断があるし
その次の日は…」
友人が私に話しかける。
「そういえば、久しぶりに会いに行く?
もう時間とれるかわからないし」
友人と車を走らせた。
ずいぶん行くと、周りは畑で囲まれている。
開けた土地に着くと、
奥に誰かの別荘が見えてきた。
古いが、解放感のある建物だ。
ベランダから数人がこちらに手を振っている。
「おーーーい!待ってたよー!」
彼らすぐ部屋の中に戻ったかと思うと、
玄関から何人も出てきた。
遠くて誰が誰だかわからないが、
走ってこちらへ向かってくる。
走っているのは、ヒヨコ…?大きなヒヨコ。
立ち上がって手を振ったりしているウサギ。
照れた顔をした羊。
人間の背丈ほどの馬。
皆違和感なく二足歩行をしている。
思い思いに話しかけてくる。
「待ってたよー!」
「遅かったねー!」
「ゆっくりできるんでしょ?」
私たちは彼らの別荘へ入ると、紅茶とお菓子が用意されていた。
「遊ぼうよ!」
みんな遊ぶのが大好きなようで、
おもちゃや絵の具などをどこからか持ってきた。
随分と遊んでいると、
テレビから話し声が流れてきた。
「明日は〜大学の入学式が執り行われます。
街の人たちに話を聞いてみました。…」
一人のヒヨコが話しかける。
「行っちゃうの?」
すると動物たちの顔が一斉に悲しくなってしまった。
友人が説明する。
「大丈夫。
あなたたちのことは絶対に忘れないし、
私たちも絶対に忘れないよ。
いつでも側にいるから。
時間が空いたらまた来れるから」
私たちは帰る事にした。
車の周りは動物たちで埋め尽くされている。
助手席に乗り込み、窓を開けた。
「行っちゃうんだね。でも大丈夫。」
ヒヨコの一人が私の手を取り言った。
ふわふわしていて気持ち良い。
友人がエンジンをかけ、出発した。
私は叫んだ。
「いつも一緒だよ!
私のこと考えて!
私もみんなのこと考えるから!」
大きく手を振った。
長い時間振り続けた。
家に着くともう夜だった。
「明日から忙しくなるけど、
でもリフレッシュできて良かったよね」
友人がテレビを見ながら言った。
私は入学式の準備を続けた。